英国のWeb開発者David Bushellが2026年9月22日、自身のブログ「I said no and Apple said yes(私は「いいえ」と答えたのに、Appleは「はい」と答えた)」で、macOS 27へアップグレードしたところApple Intelligenceをオフにするスイッチ自体が無くなっていた、と報告した。彼は2025年2月に同機能を明示的にオフにしていた。本記事はこの投稿に書かれている事実のみを整理し、AI機能の同意(consent)の扱いとして何が問題視されているかを見ていく。なお本件はAppleの公式アナウンスではなく、一人の開発者が自分の実機で観測した報告である。
何が起きたのか
元記事に書かれている時系列は以下のとおり。
- 2025年2月5日 9:51am:macOS 15.3が、15分おきに個人データを外部送信する機能を有効化していることに気づき、オフにした。当時のAppleはこの機能を無効化する設定を提供していた。ただし2つ目の設定はより深い階層に隠されていた、と本人は書いている。
- 先週:macOS 15から27へアップグレード。本人は「自分が飛ばしたメジャーバージョンは1つ、Appleは10飛ばした」と皮肉っている。
- アップグレード後:「いいえ」のスイッチが削除されていることを発見した。
Last week I succumbed to Apple’s harassment and upgraded macOS 15 to 27. I only skipped one major version, Apple skipped 10! And today I discovered that Apple had removed the “no” switch.
(訳:先週、Appleの嫌がらせに屈してmacOS 15を27にアップグレードした。私が飛ばしたメジャーバージョンは1つだけ、Appleは10も飛ばした。そして今日、Appleが「いいえ」のスイッチを削除していたことに気づいた。)
さらに元記事は、macOS 27の設定を掘った結果として次の点を挙げている。
- Siriを(再び)オフにしたが、停止できないSiriプロセスが複数残り、メモリを消費しデータを書き込み続けている。その目的は不明だと書いている。
- そのコントロールからは「Apple Intelligence」という表記が外されていた。
- 本来ペアレンタルコントロール用であるScreen Time(スクリーンタイム)の制限配下に、隠れた設定を発見した。ただしこれらはApple Intelligenceを無効化するものではなく、各種メニューから該当ツールを隠すだけだとしている。
- Apple Intelligenceがディスクを22.28 GB占有していた。Appleは新型MacBookで1TBあたり£500を課金しているので「£11ほど盗まれた計算だ」と皮肉を書いている。
なぜ起きたか/何が問題か
まず切り分けておくと、元記事はAppleがなぜスイッチを削除したのか、技術的・方針的な理由を説明していない。Apple側の公式説明も引用されていない。書かれているのは観測結果と、それに対する筆者の批判である。
Bushellが最も問題視しているのは、設定の場所や容量ではなく、すでに明示的に拒否していたという事実が無視された点だ。
All of this garbage was enabled after upgrading to macOS 27 despite me having “Apple Intelligence & Siri” turned off already. That was a rather explicit “no”, no?
(訳:このガラクタ一式は、私がすでに「Apple Intelligence & Siri」をオフにしていたにもかかわらず、macOS 27へのアップグレード後に有効化されていた。あれはかなり明示的な「いいえ」だったはずだが?)
記事は個別のOS挙動からAI業界全体への批判へ広がる。筆者は「AI業界には『同意』という語が学習データにも社内ハンドブックにも存在しないように見える」と述べ、今月自分が集めた見出しとして3本を列挙している(Xでの児童性的虐待コンテンツの残存、OpenAIが直面する50件超の消費者被害・不当死訴訟、OpenAIとMicrosoftがLLMはWebを破壊し盗用の上に成り立っていると認めた件)。これらは元記事が見出しとして挙げているもので、本記事は各報道の内容を検証していない。また自身の「AI policy」ページは追いつかず陳腐化した、とも書いている。
記事の締めは次の一文だ。「AI bros keep telling me “just turn it off” and when I do they remove the choice.(AI界隈の連中は『オフにすればいい』と言い続けるが、実際にオフにすると彼らは選択肢そのものを取り上げる)」
なお、「OSアップデートがプライバシー設定をリセットする仕様である」とAppleが認めた事実は元記事には書かれていない。ディスク使用量やプロセスの挙動が全ユーザー共通なのかも、元記事からは判断できない。
読者がどう守るか
元記事から一般的に導ける範囲だけを挙げる。具体的な設定パスやコマンド、完全に無効化する手順は元記事に示されていないため、ここでも書かない。
- メジャーアップデート後にプライバシー関連設定を再確認する。過去にオフにした設定が維持されている保証はない、というのが本件の要点そのものだ。
- 設定が1か所にまとまっているとは限らない。筆者はmacOS 15当時も2つ目の設定がより深い階層にあったと書き、macOS 27ではScreen Time配下にも関連項目を見つけている。
- コントロールの名称変更に注意する。筆者は該当のコントロールから「Apple Intelligence」の表記が外れていたと報告している。名前で探していると見つからない可能性がある。
- ストレージ使用量を確認する。筆者の環境では22.28 GBが消費されていた。
- Screen Timeの制限で消せるのは表示だけ。筆者自身が「これらはApple Intelligenceを無効化しないが、メニューからツールを隠して整理はしてくれる」と明記している。無効化と混同しない。
まとめ
- macOS 15には存在したApple Intelligenceのオフスイッチが、macOS 27では見当たらなくなった——これが今回の報告の核心。
- 一度オフにした設定がアップグレード後に有効化されていた。Apple側の公式説明は元記事には示されておらず、現時点では一開発者の実機報告ベース。
- Screen Time配下で操作できるのは表示の非表示化であって、機能の無効化ではない。
実装家視点で言うと、怖いのは機能が増えることではなく、一度下した設定判断が更新のたびに無効化され得ることのほうだ。自動化を組んでいる側は「設定した」を完了状態として扱いがちだが、この報告が示しているのは、OS側のデフォルトは静かに戻り得るし、そのときスイッチごと消えている場合すらある、という話。設定は一度やって終わりにせず、アップデート後に自分で見に行く運用まで含めて作っておく——今回の件はそう読んだ。


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