2026年8月31日、Vals.aiのブログにGeby Jaff氏の記事が掲載されました。Claude Fable 5.1が、17世紀の作家Sir Thomas Urquhartの暗号「Cyphral Distich」を解いたという報告です。この暗号は数百年にわたって解かれていないとされ、暗号研究者Klaus Schmeh氏の「未解読暗号トップ50」にも入っていました。記事によると、人間は途中で一切口を出していません。所要時間は44分、消費トークンは176kです。さらに、同じ作者が残した、より大きな暗号もほぼ解読したと書かれています。
発表内容
Cyphral Distichは、Urquhartの著作『Logopandecteision』の巻末にある暗号文です。32個の数字が2行並んでいるだけで、手がかりはこの64個の数字しかありません。
5.3.27.38.32.14.21.8.66.8.70.39.5.9.12.18.2.3.56.5.1.7.3.2.13.19.3.25.9.3.16.6.
25.15.13.6.11.20.5.1.2.12.1.20.20.49.20.20.35.33.4.6.8.35.5.33.5.5.18.10.3.11.32.42.
1899年には『Notes and Queries』誌で未解決問題として取り上げられ、20世紀の暗号文献にも登場しています。これまで頻度分析、単純な換字、同音異字換字などが試されましたが、どれも解読には至りませんでした。
Fable 5.1が解読の決め手にしたのは、次の2点です。
- 暗号の直前に、32項目の「Proquiritations」が載っている。Urquhartはわざわざ「32」という数を強調している
- 暗号に添えられた詩に、誠実な読者は「自分の心の願い」を見つけるとある。そしてProquiritationsの各項目は「is the desire」「wish」などの言い回しで終わっている
ルールはシンプルです。暗号の各行のi番目の数字について、i番目のProquiritationを開き、その数字番目の単語の頭文字を取ります。これで次の平文が出てきました。
O GOD UPHOLD KING CHARLS THE SECOND AND MAKE HIM THE SUPREME RULER OF THIS LAND
“Most historical attempts assumed the key was external … But the key was not an external cipher alphabet at all. The key was the book itself.”
(これまでの解読の試みの多くは、鍵が本の外にあると考えていた。しかし鍵は外部の暗号表ではなく、本そのものだった)
記事によれば、この答えは自分で正しさを確かめられる形になっています。各行がちょうど32文字で、行末が「and」と「land」で韻を踏む2行詩になっているからです。Urquhartは熱心な王党派で、チャールズ2世のための祈りを隠したという点も歴史的に筋が通る、とされています。
Fable 5.1は同じ方法で、Urquhartのもう1つの暗号にも取り組みました。1652年の著作『The Jewel』にある「Cyphral Octastich」で、数字は285個あります。こちらは数字をページ番号の代わりに使う方式でした。k番目の数字は、本のkページ目の何番目の単語かを示します。結果として9文字を除いて解読できたと報告されています。
なぜ重要か
著者は、過去数か月いろいろな最先端モデルに未解読暗号を解かせようとしてきたと書いています。そのうえで、次のように述べています。
“Across those months, no other frontier model I tried produced a verified solve.”
(この数か月で試した他の最先端モデルは、どれも検証できる解読を出せなかった)
著者の指示の出し方もあわせて紹介されています。与えたのは次の3つでした。
- 「未解読の暗号を解け」という目標
- 励まし。Fable 5.1がこれまで解いた数学の問題などを調べさせ、「それに比べれば簡単なはずだ」と伝えた
- 2つの制約。1つ目は、すでに答えがあるものや、答えの候補が複数ありうるものは避けること。2つ目は、Kryptos K4のように何千人もの人やCIAのような組織が本気で取り組んだ最難関は避けること
Fable 5.1はいくつもの問題を見て回り、進展しない問題では手を引きました。そしてこの暗号を見つけると、手がかりにほぼすぐ気づいたそうです。
現時点での未確定事項
- Distichの解読について、第三者の暗号研究者が確認したかどうかは元記事に書かれていない。著者自身も最初は「appears to have actually solved it(実際に解いたようだ)」という言い方をしている
- Octastichは9文字が読めていない。4行目は「IRSH」と暗号化されている(IRISHの書き間違いか、意図的な短縮か)。途中から1ページずれている箇所もある。これらを確定するには、実物の本か1983年のJack & Lyall版が必要とされている
- 記事中の「within a day(1日以内)」と「44分」がそれぞれ何の時間を指すのか、細かい内訳は書かれていない
- 比較に使った他のモデル名、実際に使ったプロンプトの全文は公開されていない
まとめ
Claude Fable 5.1は、人間の介入なしに44分・176kトークンで、数百年解かれていなかったCyphral Distichを解読しました。鍵は外部の暗号表ではなく、本の中にある32項目のProquiritationsでした。同じ作者のより大きなOctastichも9文字を除いて解読しましたが、残りを確定するには原本の確認が必要です。
実装家の視点で見て面白いのは、解読そのものより課題の選ばせ方です。著者は「答えが1つに決まり、正しさを検証できる問題」だけに絞り、難しすぎる問題は最初から外しています。そのうえで、進まない問題からは手を引かせました。現場でエージェントに長いタスクを任せるときも、「正解かどうかを機械的に判定できるか」を先に決めておくと、今回のように結果を信用しやすくなります。今回の2行詩も、32文字ちょうどで韻を踏むことで正しさを自分で示していました。


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